2016-03-11
AVポルノ被害、女子高生の性被害など女性に対する性暴力と人権侵害を追及
2016年3月11日 第190国会 内閣委員会
○池内委員 東日本大震災と福島原発の事故から5年という節目の年を迎えました。改めて、犠牲となられた方々に哀悼の意を表するとともに、被災者の皆さんにお見舞いを申し上げたいと思います。
また、原発再稼働推進ありきで除染と賠償の打ち切りなどということは断じて許されないことです。国と東京電力の責任で、戻りたい人も戻れない人も、全ての被害者の生活となりわいの再建を支援することができるように、私も全力を尽くしていきたいというふうに思います。
きょうは、性暴力の問題で質問をします。
昨年の暮れに閣議決定をされた第四次男女共同参画基本計画では、第七分野として、女性に対するあらゆる暴力の根絶を掲げています。女性に対する暴力について、「犯罪となる行為をも含む重大な人権侵害」というふうに定義をしています。これはとても大切な定義だと思います。その立場からあらゆる施策も展開されるべきだというふうに私は思います。
その施策を展開する上でも、まず第一に必要なこと、それは女性に対するあらゆる暴力の実態、女性に対する人権侵害の実態について正確につかむことだと思います。既に内閣府は、1999年から男女間における暴力に関する調査を行って、昨年3月に2014年度の報告が公表されています。この調査で、男性から無理やり性交された女性がどれくらいいたか、そのうち、未成年のうちに被害に遭った人はどれくらいいましたか。
○武川(恵)政府参考人 お答えいたします。
御指摘の平成26年度の調査でございますけれども、この調査におきまして、女性1,811人がサンプルでございますが、これまでに異性から無理やりに性交されたことがあるかを聞いておりまして、一回あったが3.7%、二回以上あったが2.8%で、被害経験のある女性は6.5%となっております。
また、そのうち未成年の割合がどのぐらいかという御質問でございまして、御指摘の調査におきまして、異性から無理やりに性交されたことがあったとお答えになった方6.5%、117人につきまして、その被害に遭った時期を聞いております。小学生以下が11.1%、中学生のときが2.6%、中学卒業から19歳までが23.1%となっておりまして、未成年者が4割弱となっております。
○池内委員 15人に1人、しかもほぼ4割が未成年のときに被害を受けています。
重要なのは、この調査が、全国5,000人の二十以上の男女を無作為に抽出し、そのうち女性1,811人からの回答を得たもの。特定の人を対象にしたものではないということです。
この調査は1999年度から3年ごとに行われていますが、無理やり性交されたと答えた女性の割合はそれぞれどうなっていますか。
○武川(恵)政府参考人 御指摘の調査、過去のものをさかのぼりますと、平成17年度が7.2%、平成20年度が7.3%、平成23年度が7.7%、平成26年度が6.5%となっております。
○池内委員 一度限りの現象ではないということだと思います。いつ調査をしても同じような結果が出たということは、日本社会では恒常的にこうした状態が続いているということを示しています。人数に換算すれば、日本の二十以上の女性の人口は、2014年度の推計で53,656,000人です。その6.5%といえば、3,487,000人にも上ります。何度調査をしても同じような比率が出てきていて、この人数は決してとっぴなものではなく、実態に即したものだと私は思います。
私は、率直に言って、非常に驚きました。とても恐ろしい実態だと思いました。政府、社会を挙げて克服をしていかなければならない問題だというふうに思いますが、官房長官はこの数字をどのように受けとめられますか。
○菅国務大臣 性犯罪というのは、女性に対する暴力の中でも、その人権を著しく踏みにじる最も許してはならない行為で、多くの被害者の方が今おられることを深刻に受けとめております。
政府として、性犯罪の根絶に向けて、加害者と被害者を生まないための若年層を対象とする教育、さらには、女性に対する暴力を容認しない社会の環境をつくっていく、このことも大事だというふうに思っています。
また、性犯罪への対処、未然防止のための性犯罪に関する罰則のあり方、このことについても見直しを行うとともに、また関係の法令がありますから、その法令を厳正に運用し、そしてまた適正で、かつ性犯罪捜査を推進し、そして事件として挙げて罰則を受けてもらう、そういうことをしっかり行うことがまず大事だというふうに思います。
また、被害者に対しては、被害直後から相談を受けて、迅速にかつ適切に医療的支援さらに心理的支援などを提供することによって被害者の心身の負担の軽減を支援する、このことも大事だというふうに思います。
被害を訴えることをちゅうちょせずに必要な相談を受けられる体制、被害者の心身回復のために被害直後及び中長期の支援が受けられる体制の整備、こうしたことを図っていくことも大事だというふうに思っておりますので、今委員から指摘をされました数字、そうしたものが完全になくなるように努力をしてまいりたいというふうに思います。
○池内委員 ぜひ、積極的に取り組んでいただけたらというふうに思います。
性暴力の被害というのは、本当に見えにくい被害だと思います。誰かに相談したかという問いに、誰にも相談しなかったと答えた人が六七・五%。被害が顕在化していないということだと思います。なぜ相談しなかったかといえば、恥ずかしくて誰にも言えなかったが三八%、その他、二〇%以上を占めた回答は、自分さえ我慢すれば、思い出したくない、自分にも悪いところがあった、相談しても無駄だと思ったというような回答が続きます。
無理やり性交などという、性暴力であり、性犯罪にさらされてもなお、被害者が自分を責めて沈黙を強いられている。多くの方々が沈黙を強いられているということに私も心が痛みます。
性暴力をやはり社会から根絶しないといけない。そのためにも、ぜひとも国を挙げて取り組む必要があるというふうに思うんです。
今、私は、緊急に必要なことというのは、現に被害を受けた人に寄り添うことだと思います。一つは、被害を受けた女性たちに対して、やはり、あなたが悪いのではない、被害者なのだという、この強烈なメッセージを国が発信していくことが大事だというふうに思いますが、加藤大臣、どうですか。
○加藤国務大臣 また後でも議論させていただくだろうと思いますけれども、そのためにも、政府としてワンストップ支援センターの設置を促進していくということが必要だというふうに考えておりまして、今の箇所をさらにふやして、各都道府県に最低一カ所を設置するという目標を掲げて、まずは相談しやすい環境をしっかりつくっていくということが必要だと思います。
それから、今お話がありましたように、相談に対するちゅうちょする思い、それを、そうではなくてきちんと相談してほしい、そういった呼びかけをしっかりしていくことも大事なんだろうな、こう思います。
○池内委員 ぜひとも、国を挙げて、あなたは悪くないというメッセージを発信していただきたいというふうに思います。
同じ内閣府の調査で、男女間の暴力を防止する必要な対策、体制、このために何が必要であるかと聞いたのに対して、どのような回答が一番多いですか。
○武川(恵)政府参考人 御指摘の調査におきまして、男女間における暴力を防止するために必要だと考えることを聞いた結果でございますが、まず、一番多かったのが、被害者が早期に相談できるよう、身近な相談窓口をふやす、これが六九・四%で最も多く、次いで、家庭で保護者が子供に対し、暴力を防止するための教育を行うが六四・六%などというふうになっております。
○池内委員 私も、性暴力の被害者を支援する上で、ワンストップ支援センターというのはとても大事だというふうに思います。とりわけ、病院拠点型のセンターというのが大事だというふうに思うんです。
先ほど阿部議員も御指摘をされていましたけれども、国際的にもその役割というのは重視されていて、例えば、国連「女性に対する暴力に関する立法ハンドブック」の中では、このような性格を持つ支援センターは人口二十万人に一カ所が最低基準だと言われているし、その基準からすると、日本には各地に五百カ所あってもおかしくないという水準です。余りにもやはりおくれているのではないかというふうに思います。
私も、昨年末大阪のSACHICOを視察させていただきました。すごく心に残ったのは、やはり、被害を受けた女性たちが、それこそ自分の体は自分のものであるということ、この当たり前の権利を奪われた女性たちがもう一回自分の人生を自分の足で歩んでいくということはとても大変なことで、そういう被害を受けた女性たちが来院したら、まず、相談窓口でどこに自分が座るかというのをその人に決めてもらうんだというふうに説明を受けたんです。そういうところから自分で自分の人生をやはり決めていくということを、病院拠点型であるからこそ最初から最後まで支援ができるということを私はとても痛感しました。
なので、やはり二十四時間体制、病院拠点型、長期間継続的に支援をということが求められていると思うんです。被害は時間と場所を選ばないので、電話開設だけとかではなくて、やはり被害の実態に見合う支援が求められているのではないか。
SACHICOの例にもあるように、予算的な手当てや制度的な手当てというのはどうしても必要だと思うんです。先ほどの答弁でも、加藤大臣もその点はお認めになると思うんです。
阿部議員も指摘をされていましたけれども、支援員の配置というのも大事だし、同時に、その前提となる支援員の育成に係る費用、これもとても大事だと思います。医学教育における性暴力に関する講座の導入なども現場の方々は求めていらっしゃいます。さらには財政状況も、先ほど阿部議員も指摘されていましたけれども、診療報酬の体系の見直しもぜひやっていただきたいと思います。
この点は、加藤大臣は厚労大臣ではないので担当大臣ではないとは私もわかっているんですけれども、やはり男女共同参画の推進のための大臣として、各省庁にぜひ働きかけていただきたいと思いますが、いかがですか。
○加藤国務大臣 今お話がありました、先ほど阿部委員からもありました大阪のSACHICO。最初にスタートしていただいた、そして、二十四時間三百六十五日体制でそうした方々の相談、支援に当たっていただいておる。また、今の委員からの御説明のように、非常にきめ細かい配慮があるなということを改めて実感させていただきました。
今、そうしたセンターに対する財政措置というのは基本的にしていないわけでありますが、モデル事業等を通じて促進させていただいている。こういったことを通じて、二十万人につき一カ所という国際機関の話もありますけれども、まずは、国内で各都道府県一軒、しっかりとこれを実施していきたいと思っております。
それから、それを展開する中で、やはりそれぞれの地域、SACHICOのように病院中心型もあります、相談中心型もあります。いろいろな実情も聞きながら、必要な対応にどういうものがあるのか、しっかりと研究しながらそれに対して対応していきたいと思っております。
○池内委員 ぜひ、設置目標も掲げて推進していただきたいんですが、いかがですか。ちゃんとこの時期までにこれだけつくるという設置目標、どうですか。
○加藤国務大臣 基本的には各都道府県ということでありますけれども、この第四次の男女共同基本計画は五年間になりますから、少なくともそこにおいては具体的目標として各都道府県一軒と言っておりますから、それはしていかなきゃいけない。
委員はそれじゃ遅いということかもしれませんが、できるだけそれぞれが前倒しというんでしょうか、早期に設置をしていただけるよう我々も働きかけをしていきたいと思います。
○池内委員 ぜひ、よろしくお願いしたいと思います。
もう一つは、加害者を減らす措置です。
内閣府の調査では加害者についても行っていて、その結果は、大多数の人が、交際相手、元交際相手、配偶者、元配偶者、親、兄弟、それ以外の親戚など、面識のある人から被害を受けている。私は、女性たちに対して無理やり性交を迫るというのは、夫婦であっても親子であっても犯罪行為であるという認識が絶対に必要だというふうに思います。その認識がなければ、無理やり性交された人が三百万を超える、こんな悲惨な実態はなくならないというふうに思います。
先日発表された国連女性差別撤廃委員会の総括所見の中でも、近親姦、強姦の定義の拡大、婚姻関係におけるレイプなどを犯罪と規定するように求めています。今、刑法の強姦罪の改正の議論が進められていますけれども、非親告罪化の議論はもとより、配偶者間強姦についても検討する必要があると思うし、暴行、脅迫要件の緩和、被害者が年少者である場合の公訴時効の廃止、停止、こうした問題についても改正を急ぐべきだと思いますが、どうですか。
○盛山副大臣 池内委員から御指摘がありました件につきましては、昨年の十月九日に、性犯罪に対処するための刑法の一部改正について、法務大臣から法制審議会へ諮問したところであります。この審議会の議論をまず見守りたいと思います。
そして、昨年十月の諮問というのは、昨年の八月に取りまとめられた性犯罪の罰則に関する検討会の報告書の内容を踏まえたものであります。
この検討会におきましては、御指摘の、配偶者間においても強姦罪が成立することを明示する規定の新設、強姦罪等における暴行、脅迫要件の撤廃または緩和、年少者に対する性犯罪についての公訴時効の撤廃または停止のほか、女子差別撤廃委員会の最終意見で指摘された事項、すなわち、近親姦を明示的に処罰する規定が設けられていないこと、いわゆる性交同意年齢が十三歳であることなどについても論点として取り上げられ、さまざまな観点から議論が行われたものと承知しております。
これらの論点につきましては、同検討会において、法改正をすることに慎重な御意見や、法改正をするべきでないとの御意見が多数であったことなどから、今回、法制審議会に諮問しなかったものでございます。
いずれにせよ、これらの事項については、同検討会における議論をも踏まえ、法改正の要否を含めて慎重に検討すべき問題であると考えております。
○池内委員 ぜひとも検討をお願いしたいと思います。
ここでテーマがかわりますので、菅官房長官、結構です。ありがとうございます。
女性に対する性暴力の問題で、私は見過ごすことができないというのは、やはり年少者、とりわけJKビジネスの名で女子高生が被害にさらされているということだと思います。
昨年秋、国連のマオド・ド・ブーア・ブキッキオ児童売買、児童買春及び児童ポルノ国連特別報告者が来日をして、日本国内で調査を行って記者会見をしました。そのとき、この報告者が、女子学生の一三%が援助交際を経験していると述べたことが大きな問題になりました。外務省が十一月二日に、根拠がないとして発言の撤回を申し入れた。私も、根拠のない数字をあげつらうということは正しくないと思います。けれども、JKビジネスが多くの少女たちを巻き込んでさまざまな問題を起こしているということは事実だと思います。
それでは、一体、この一三%は事実無根と抗議した日本政府は、いわゆるJKビジネスにかかわった少女たちがどれくらいいるとつかんでいるのか。つかんでいないとすれば、実態調査を行うべきではないか。加藤大臣、いかがですか。
○加藤国務大臣 内閣府では、被害者数そのものは把握をしておりません。
ただ、内閣府においても、さまざまな民間団体等ともいろいろと意見交換もさせていただいております。そういった場所を通じて実態把握に努めていきたいというふうに思います。
ただ、今委員御指摘のように、さはさりながら、やはり状況というのは把握しないと適切な政策は打てないというのは、そのとおりだというふうに思います。ただ、こういったものをどういうふうに把握すればいいのかというのは、正直言って、普通の調査とはまた違う。また、国がやる場合でありますから、それはそれなりにいろいろと考えていかなきゃいけない点があるんだと思います。
そういったことを含めて、把握をする必要性は十分共有していきたいと思いますが、どういう形でやればいいのか、しっかり勉強させていただきたいと思います。
○池内委員 私も、ぜひとも実態をつかんでいただきたいというふうに思っています。
そこで、警察庁に聞きます。
JKビジネスとはどういうものか。愛知県警ではどのように述べていますか。
○種谷政府参考人 お答えいたします。
いわゆるJKビジネスについては、女子高生等の少年の性を売り物とする新たな形態の営業でありまして、大規模な繁華街等を擁する大都市を中心として、例えばリフレですとか散歩等と称して、さまざまな形態により出現しているものと承知しております。
これらの営業につきましては、女子高生等が児童買春等の犯罪の被害者となる危険性が高くて、少年の保護と健全育成の観点から憂慮すべきものであると認識しております。
警察といたしましては、これまでも、これらの営業に対しまして、労働基準法ですとか児童福祉法等を適用して取り締まりを行っているところでありまして、引き続き、実態把握に努めながら、これらの業務に従事している女子高生等に対する補導を推進するとともに、違法行為については厳正に取り締まってまいりたいと考えております。
○池内委員 愛知県警のホームページの該当箇所をちょっと読み上げていただけないですか。
○種谷政府参考人 お答えいたします。
愛知県警におきましては、ホームページで「JKビジネスってなに?」ということで定義をしておりまして、JK、女子高生と称し商品化し、十八歳未満の少年の性を売り物とする営業形態の総称ですということで、JKビジネスの例として、ガールズ居酒屋、リフレ、見学クラブ、撮影、お散歩、観光案内等が例示をされているところでございます。(池内委員「どんな危険があるか」と呼ぶ)
その下に、「どんな危険があるの?」というふうに書いておりまして、「十八歳未満の少年がJKビジネスで働いたりすることは、不特定多数の客から性の対象として見られ、児童買春やストーカーの被害に遭うなどの危険性があります。また、安易な気持ちで近づいた結果、重大な犯罪に巻き込まれることも考えられますので、この種の営業に関わらないようにしましょう。」というふうに書いてございます。
○池内委員 少女たちは、性暴力の被害に遭うことなどない、言ってみれば普通のバイトだと思って、気軽な気持ちでこのJKビジネスに接近をしています。しかし、実際には客に性行為を求められることはよくあることで、愛知県警のホームページでも言っているように、客の要求によって、容易に性行為にまで行き着いている。
私は、数年前に錦糸町で、家出をしてきた十六歳と十七歳の少女二人に出会いました。私にはこれはとても衝撃的な出会いでした。二人とも、家族関係がうまくいっていなくて家に居場所がない、不登校で、学校に行っても居場所がないと。私に会うまでの二日間、一体どこで何をしていたのかと聞いてみると、声をかけてきた男性の家に泊まって望まない性交を強要されていたと。
二人に出会ったその日に、私は、安心して温かい布団で寝てもらいたい、ぐっすり眠ってもらいたいという思いから、自分のアパートに連れて帰って一晩一緒に過ごしたんですけれども、彼女たちと夜通し話すと、その少女は、肩から手首まで、また膝下、ぎっしりとリストカットの跡が幾重にも刻みつけられていて、皮膚がかたくなっていました。その子のバッグの中には、勉強したいと言って、国語の教科書や数学、英語の教科書が入っていたわけなんです。こういう少女たちが、今、行き場所がない。誰に出会うかによってその後の人生が大きく変わってしまうような社会は、私は異常だというふうに思うんです。
JKビジネスなどにからめ捕られた少女たちの相談に乗ってさまざまな支援に取り組んでいる、一般社団法人Colaboの代表仁藤夢乃さんにお話を伺うと、二〇一四年度、八十四名の少女から相談があったということで、そのうち、JKビジネスにかかわる少女が五十八名、個人売春を経験したという少女が二十三人、あっせん者のもとで管理売春をさせられていた少女が十七名。彼女たちの多くが、家族から身体的、精神的また性的虐待を受けていたり、ネグレクト、親の自死、家庭の経済状況悪化、家に居場所がなくなって、町にあふれてきている。
問題は、こうした少女たち、町をさまよっている少女たちに誰が声をかけるか、ここで運命が分かれているということだと思います。
仁藤さんは、帰るところがなく町をさまよっているときに、宿と食事を与えてくれるという人に話しかけられて、その人が悩みを聞いてくれたり、また、ほかにも同じような状況の同世代の女の子たちが楽しく働いているよなどというふうに言われたら、やはりついていきたくなるのは自然なことだろうというふうに指摘しています。
きょう食べるものがない、きょう寝るところがない、そんなときに声を上げられない少女に対して声をかけるのは、そういう少女を利用しようとする大人たちだ、具体的にはスカウトと呼ばれる人物であり、店長であり、店のオーナーだというふうに仁藤さんが指摘しています。
彼女はこういう業界の人々のことを裏社会の人たちというふうに呼んでいますけれども、こうした関係性の貧困の中にある子供たちに、裏社会が居場所や関係性まで提供している、そして彼女たちを引きとめるために、お店を居場所にどんどんしていくわけですね。
私は、こういう少女に声をかけるという仕事というのは、本来、JKビジネスなどに少女がからめ捕られないために、国がやる、政治がやる仕事だというふうに思いますが、大臣、いかがですか。
○加藤国務大臣 今、池内委員の生の体験のお話を聞かせていただきました。
まさに、居場所というのは大変大事なことなんだろうというふうに思います。一時的な保護という意味においては、配偶者暴力相談支援センターとか個人相談所というのが、被害の状況において必要な場合には一時保護を行っているというのがあります。また、実際、配偶者暴力の被害者のさまざまな年齢の方が保護されているというふうに承知もしております。
またさらに、このJKビジネスの被害少女の避難については、民間の団体においても取り組んでいただいているということでございます。正直言って、まだ全体を我々は把握しているわけではございません。そういった民間の団体の取り組みなどもしっかりと見せていただきながら、この問題の奥深さといいますか、状況というものをしっかり勉強させていただきたいと思います。
○池内委員 やはり、今ある受け皿ではなかなか子供たちの居場所になり切らないからこそ、こういう実態があふれているんだと思うんです。
その点で、私も驚いたんですが、店のスタッフというのは、居場所づくりのために本当に並々ならぬ努力をしています、携帯を買い与えたり、美容院代を出したり。こうした形で、どんどん逆らえない形、あとは、人間関係をシャットアウトさせていって、とても狭い人間関係の中に囲い込んでいくことなど、住まいを提供するかわりに働かせるわけですけれども、少女が抜け出せない状況というのをやはりいろいろとつくっているわけです。
私はいつも怒りを感じるんですけれども、こうした性暴力の問題となると、その問題を聞く側の方に、もう既に偏見が埋め込まれていることがとても多いというふうに思うんです。JKの問題も、少女の貞操観念の問題とか素行が悪いとか非行の問題というふうにやはり現場でも捉えられがちで、私は、それ自体が偏見だというふうに思います。子供たちが置かれている困難な実態とは全くかけ離れた偏見だと思います。
少女たちは、知らない人との性的接触を求めているのではありません。少女たちは、衣食住を、きょう寝る場所を、そして温かい人間関係を求めているんだということを強調したいと思います。
ある少女は、実の父親からの性虐待から逃れるために、地方から首都圏に逃げてきたそうです。首都圏の民間の方々とつながることができて、首都圏の警察に相談に行ったそうです。すると、その警察官から、被害が実際に起こった場所に自分のお金で戻って、その場所の警察に被害届を出せというふうにあしらわれたそうです。
私は本当に、ここに表社会と裏社会の決定的な違いがあるということを言わないといけないと思います。裏社会の人々は少女に、住所地に戻れ、居住地に戻れなどということは決して言いません。学校や家庭に頼れなくて、関係性もなくて、貧困の中にいる少女たちに、やはり裏社会というのは、居場所、関係性を、あの手この手で本当に居場所にしていく。
私は、個人に合ったメニューをやはり準備できる、そういう体制が子供たちを守っていく第一歩だというふうに思うんです。仕事や食事を提供し、やりがいと仕事を持たせて、学習支援まで実は店側はやっているということなんです。
なぜ、裏社会の大人にできていることが表社会の私たちにできないのか、仁藤さんは鋭くこのように問いかけています。私は、政治に携わる者にとって、この言葉というのはとても重い問いかけだと思いますが、大臣はこの問いかけをどのように受けとめられますか。
○加藤国務大臣 ちょっと今の警察の例は、また担当大臣にもお話をしておきたいというふうに思います。
いずれにしても、まず、それぞれの被害の、あるいは被害を受けそうな方々にどういう形で対応していくのか。先ほど申し上げたようなことで、我々もいろいろさらに勉強していきたいと思います。
もう一つは、そういうことが起こらないような状況というものをつくっていく必要がある。そのための研修ということで、若年層に対して指導的な立場にある人を対象とした、あるいは相談員を対象とした研修もしながら、そうした要望、あるいは、もし万が一そういうことになればどういうところに相談に行くのかといったことについてもしっかり周知を図り、また、被害者の支援を行う民間団体ともよく連携をとりながら、あるいは各関係省庁とも連携をとりながら、しっかりと対応させていただきたいと思います。
○池内委員 やはり、子供を都合よく利用する、もうけの対象にするという社会は、私は異常だと思います。子供が助けてと言えない社会はおかしいと思うんです。
やはり、誰もが温かい人間関係の中でこれまで育まれて生きてきたと思うんです、ともに笑ったり泣いたりという。時には厳しくちゃんと叱ってくれる大人の存在が、ここにおられる議員の皆さんにもそれぞれいたというふうに思うんです。こういう当たり前の社会に変えていかないといけない。子供の六人に一人が今貧困状態にあって、関係性の貧困、きょう寝る場所がない、衣食住を求めているというこの現実に、私も向き合っていきたいと思います。
私は、今二つのことが求められていると思うんです。一つは、JKビジネスなどそのものをやはり規制すること。もう一つは、JKビジネスなどに女子高生がからめ捕られていかない対策をするということ。
七日に公表された、国連の子供の買春、児童ポルノに関する特別報告者による日本に関する報告書。出されましたけれども、この中で、十代の女子が従事するJKビジネスなど、性的搾取を促進したり、つながったりする商業活動の禁止というのが勧告をされました。
国連の指摘、国としても本当に早急に対策を講じるべきだというふうに思います。加藤大臣と、また、ただいま到着されたばかりですけれども、河野大臣にもこの質問を聞きたいんですけれども、いかがでしょうか。
○加藤国務大臣 昨年の第四次男女共同参画基本計画においても、児童買春等の子供に対する性的な暴力や売買春について、関係法令を厳正かつ適切に運用し、取り締まりを一層強化するということにされているところでございます。
また、仄聞いたしますと、愛知県の青少年保護育成条例においては、女子高生をJKと称して商品化し、性を売り物にする営業形態を包括的に規制することを目的として、平成二十七年七月からそうしたものも施行されているというふうにも承知をしております。
こうした規制などを含めてどういう対応があるのか、しっかり勉強させていただきたいと思います。
○西村委員長 大臣は質問を聞かれていなかったので、もし答弁を求めるのなら、もう一度質問してください。
○池内委員 済みません。
七日に公表された国連の勧告に関するのですけれども、児童ポルノに関する特別報告者によって、日本に関する報告書の中で、十代の女子が従事するJKビジネスなど、性的搾取を促進したり、またそれにつながったりする商業活動の禁止が勧告をされました。
この国連の指摘に、国としても早急に対応すべきではないかという質問です。
○河野国務大臣 御指摘の報告書の中には、いわゆるJKビジネスという記載がございますが、やや正当な根拠に基づくものではない記載があるというふうに承知をしております。
いずれにいたしましても、このJKビジネスにつきましては、女子高校生などが児童買春の被害者となる危険性があることから、極めて憂慮すべきものだというふうに認識をしております。
警察といたしましては、こうしたJKビジネスと言われているものの実態把握に努め、労働基準法、各種法令を適用して取り締まりを行うと同時に、こうした業務に従事している女子高生に対する補導を行っているところでございます。
引き続き、こうした犯罪の取り締まりを積極的に進めるよう警察を指導してまいりたいと思います。
○池内委員 ブキッキオ氏の報告の中の一三%という数字、正確でないものを使うというのは私も間違っているとは思うんですけれども、そもそも実態調査がないということは重大な問題なので、最初の質問にも戻ってしまうんですけれども、ぜひとも内閣府による調査を求めていきたいというふうに思っています。
からめ捕られないための施策という点ではどうかといいますと、警視庁はヤングテレホンセンターなども持っていて、平日の受け付け時間は八時半から夜八時、土日は夕方五時まで。少年センターというのも都内に八カ所あって、受け付け時間は朝八時半から夕方の五時十五分までということなんですね。
私は、これらの対応が全く無駄だとはもちろん思わないわけなんですけれども、同時にサイバー補導なども、今おっしゃられましたが、これも、ただ警察は補導した後に家族に連絡するということが大体基本的な対処だというふうに聞いています。家が居場所になっていない子供たちを家庭に戻しても、やはりそれでは問題は解決しないというふうに思うんです。現実にこうした少女たち、性暴力の被害を受けるような少女たちに真に寄り添おうとすれば、窓口が二十四時間あいている必要があるし、いつでも駆け込めるということが大事だと思います。
それだけじゃなくて、積極的に町に出て、働きかけて、少女たちに出会う努力、そして食事をとる場所、寝る場所を提供するという体制が、やはり今求められているというふうに思うんです。
何度も繰り返しますが、彼女たちを利用しようとする側は、そうした体制をばっちり持っているということなわけです。私は、ここに、どうして表社会ができないのか、この問いかけへの答えがあるというふうに思う。
先ほど紹介したColaboなど民間の人たちは、まさにこうした、本当に二十四時間三百六十五日、地方だろうと何だろうとすぐに飛んでいくという体制を持っているわけなんです。
行政自身が積極的にこうした体制を整えていく、民間の団体の知恵も力もかりていく。そのためには、応分の支援、資金的援助、人的援助も惜しまない、そういう体制が必要だと思いますが、大臣、いかがですか。
○加藤国務大臣 先ほどとややダブってしまうところがあろうかと思いますけれども、私どもとしてできること、まず各地域にセンターを設置するなどなど、しっかりと進めさせていただきたいというふうにも思います。
また、あわせて、今お話がありましたその実態、どういう状況にいるのか、まずはそういったこともしっかり把握しながら、我々としてできること、それから、やはりどうしても、さっきお話がありましたように、実態がわかりにくい、それから実態を話しにくい、いろいろな状況があるんだと思います。そういった点に関しては、NGOの団体等が非常にきめ細かい対応もされておられるわけでありますので、そういった団体ともよく意見交換、連携もとりながら対応させていただきたいと思います。
○池内委員 仁藤さんはこういうふうに言っています。買春する側というのは、少女にどれほど断られ続けても、粘り強く、何人にも声をかけ続けるそうです。そうした執念に、今夜眠る場所を求めているその少女に差し出された買春者のおにぎりたった一つに、今私たちの社会は負けている状態だと。私は、この言葉に本当に大きなショックを受けました。
裏社会のスカウトと呼ばれる人々は、例えば、キャリーケースを一人で引き歩いて夜の町をさまよっているような少女に声をかけたり、ネットカフェで寝泊まりしている少女を見つけては誘ったり、SNSを通じて家出を希望する少女を見つけて迎えに行ったり、地方の少女であれば飛行機のチケットを送ってまで呼び寄せているということなんです。
こうした裏社会のスカウトを上回るほどの表社会のスカウトを養成していく、配置が全国に急がれるのではないですか。大臣、いかがですか。
○加藤国務大臣 今、それぞれの対応で、例えば警察等においてもそうした対応もされているんだろうというふうに思います。
ただ、その辺の連携がどういうふうになっているのか、その辺も含めて、私ども、関係省庁とよく連携をとりながら、そして、先ほど申し上げました、民間ともよく意見交換をしながら、まさにそうした魔の手よりも早く手当てができるということの御質問だというふうに思いますので、そういった対応ができるように、さらに引き続き対応させていただきたいと思います。
○池内委員 ぜひお願いしたいと思います。
ある少女は、ツイッターで、女子高生にお勧めバイトを紹介するというアカウントにフォローをされて、それをきっかけに初めてやったバイトがJKお散歩だったということなんです。店舗で受験勉強まで教えてくれる、そして待機時間に勉強ができるということで、気軽な気持ちで足を踏み入れた。ほかのバイトの経験もその子はないそうなんです。あくまで性行為などを求められることのないバイトだというふうに思っていた。しかし、仁藤さんがその危険を伝えると、こういうことがあるかもよということを伝えると、彼女は、今すぐやめたいということになって、仁藤さんと相談しながらさまざまな対応をしていったということらしいんです。
入り口は、今やもうインターネット、SNSです。身近に繁華街がなくとも、スマホ一つ持っているだけで、全国各地の子供たちがこうしたいわゆる裏社会の入り口にもう既に立っているという認識が大事だというふうに思います。
私は、国と自治体がいつでも、スマートフォンなどを通じて、生活上の相談など、気軽にLINEなどで助けてと言えるような体制が今求められていると思いますし、同時に、寝る場所がない、食事が食べられない、こうした子供たちが駆け込むことができる、住所地など関係なく、自分の家に帰れとか自分が住んでいる場所のシェルターに行けとか、そういうことを言わずに、逃げてきた子供たちをきちんと受け入れていくことのできるシェルターが求められていると思いますが、加藤大臣、この点いかがですか。
○加藤国務大臣 まさに周知ということでありますけれども、相談しやすい体制等の整備については、そうした相談窓口の所在ということをしっかりと周知していく。あるいは、先ほどもお話がありましたけれども、相談番号の周知や相談しやすくするための工夫、夜間や休祭日における相談対応の実施等、こういった方策をしっかり検討していきたいと思いますし、また、まさにインターネット時代、アプリとかサイトとかいったものは、相談しやすくするための工夫の一つだというふうにも思っております。
そうした相談しやすい環境の整備あるいは支援については、しっかりとまた関係省庁とも連携をとりながら、また、民間団体ともよく連携をとって対応させて、被害者に対して、どうやったらそうしたところに踏み込まないのか、そしてまたどういう支援が効果的なのか、その辺をしっかり検討しながら対応を充実していきたい、こう思います。
○池内委員 周知という点は本当に急がれているというふうに思うんです。
今、高校生に対する啓発ということで、法務省がことし、全国の高校一年生全員に対してこのパンフレット、「あなたは大丈夫? 考えよう!インターネットと人権」というパンフレットを配付したと聞いています。これにかかった予算が幾らで、印刷した部数がどれだけか、そして毎年配るのか、答えてください。
○盛山副大臣 委員が今御指摘いただいたのは、このパンフレットだと思います。
法務省の人権擁護機関では、インターネットを悪用した人権侵害をなくそうということを啓発活動の年間強調事項の一つとして掲げておりまして、各種啓発活動を実施しているところであります。
そして、本年度は、高校生向けのインターネットと人権をテーマにしたこの啓発教材を作成しまして、全国の高校一年生に配付の上、各種啓発活動で活用しているところでございます。予算としては、この教材にかかった予算額は約千四百七十万円ということになります。
委員から御指摘の、これからどうするのかということでございますけれども、インターネットをめぐる問題が重要な人権課題であることを踏まえつつ、これを含めたさまざまな人権課題に対応する必要があることから、引き続き、人権状況を注視しつつ、適切な啓発活動を実施してまいりたいと考えています。
啓発活動の内容についても、きょうの池内委員の御指摘も踏まえながら、充実した内容にすべくこれから検討を進めていきたい、そんなふうに考えています。
○池内委員 一千四百七十万円という予算は決して国家予算としては巨額であるというふうには私は思わないので、ぜひ毎年配っていただけるように、現場からも、ぜひ増刷してほしいという声も届いていますので、行っていただきたいと思います。
そしてJKビジネス、そしてこれから触れるAVビデオなどの危険を啓発するページをつくっていただきたいということを私も要望しましたが、検討いただけるということで、ぜひやっていただきたいと思っております。
きょう取り上げたいテーマのもう一つは、アダルトビデオと性暴力の問題です。
膨大な量のアダルトビデオが今流通をしています。そこで流されている女性の映像のうち、果たしてどれだけの人たちが自分の選択で自分の意思で出演しているのか。
長らく信じられてきた言説があります。AVには被害者などいない、女性は皆同意のもと撮影に応じているし、それ相応の対価も得ているのだから問題はないと。私は、それは本当だろうかというふうに思います。とりわけ裏ビデオと言われるものとか、インターネットを通じて配信されている画像というのがどうなのか。
二〇一五年の九月に、AVに出演を強要された女性が契約不履行として損害賠償を求められた裁判で、損害賠償の必要はないとする、とても注目すべき判決が出されました。
ちょっと事件の概要を紹介したいと思います。
この裁判の当事者となった女性は、ある繁華街の駅頭でスカウトマンから、タレントにならないかと勧誘をされた。Aさんは、普通のタレントだと考えて、わいせつな行為をするとは想定をしないままに営業委託契約書に署名捺印をしました。当時は高校生で、保護者の同意もなく、契約書のコピーも本人には渡されませんでした。普通のタレントとして扱われると思っていたら、最初からわいせつな仕事をさせられた。その後も、契約書の存在を盾にわいせつな仕事をさせられて、プロダクションの一存でAV撮影も強行されてしまいました。
女性は、やりたくないと懇願をしたけれども、既に契約が成立しているので、もし従わなければ違約金が生じると、高校を卒業して進学をしていた彼女には到底支払うことができない金額を示されて、彼女はやむなく応じざるを得なかった。撮影の一日目には数名の男性によって性行為を繰り返し強要された、そのショックで放心状態にあるときにAV出演の契約書に署名捺印をさせられたということです。
その後もAVの撮影が続いて、もうやめさせてほしいと何度も懇願したけれども、聞き入れてもらえなくて、あげくに、AVに出演しなければ一千万円の違約金が必要だとおどされて、AVの撮影に従事をさせようとしたわけなんです。
女性は出演を拒否して、こうした女性の救出、支援を行っている民間団体、PAPSという団体ですが、自力で探し当てて相談をしたわけなんです。相談を受けたPAPSは直ちに契約解除の通告を行って、プロダクション側から女性に損害賠償請求を行った。けれども、そのプロダクション側の要求が認められずに今回女性は救われた、こういう案件です。
この判決は、こうした状況に置かれている多くの女性たち、恐らく沈黙を強いられている女性たちにとても大きな励ましとなったと私は思います。なぜなら、この判決以降PAPSに寄せられた相談が、二〇一三年には一件だったものが、二〇一五年には十二月七日までに七十九件もの相談が寄せられて、三月三日に国際人権NGOヒューマンライツ・ナウが記者会見で公表して、さらにふえているんです。三月二日までに百三十一件に達したということです。私はこれすら氷山の一角だというふうに思いますけれども、これを見ても、いかに多くの女性たちがAVの性暴力被害を受けてきたかということがわかるというふうに思います。
重ねて言いますが、判決は、AVへの出演は、原告、これは芸能プロダクションのことですけれども、この原告が指定する男性との性行為をすることを内容とするものであるから、被告、これは女性の方です、この意に反して従事させることが許されない性質のものである、このように決して、契約解除が正当であるというふうに述べました。
これは本当に私は画期的な裁判だったと思います。契約書があるからAVへの出演は拒否ができない、多額の違約金を払うことができないのでやむなく出続けなければならないというふうに沈黙をずっと強いられてきた、声を上げることさえもできなかった女性たちにとって、本当に大きな力となる判決だと思います。
河野大臣と加藤大臣にお伺いしたいんですけれども、私は、現に被害を受けている女性たちが、本来違法であったはずの、この無効となるべき契約破棄に立ち上がることができるようにしていくためにも、新たな被害を生まないというためにも、この判決の趣旨を広くポスターなどで国民に広報すべきだというふうに思うんですけれども、いかがですか。
○加藤国務大臣 御指摘の判決あるいは類似の事案があることを多くの方が知るということで、同様の契約がある、あるいは、その契約を結果的に結んでしまった、それによって大変苦しんでおられる女性を減らしていくということは、大変大事なことだというふうに思います。
女性に対する暴力をなくす運動の取り組み、あるいは内閣府が行う研修事業等においても、この事案は、そういう契約というのは全く無効なんだ、縛られるものではないんだということでありますから、そういったことをしっかり周知するというようなことも検討していきたいと思っております。
○河野国務大臣 本人の意に反するアダルトビデオへの出演の強制は、これはあってはならない、女性の尊厳を踏みにじるようなものだと思いますし、そうした行為の中で違法行為があれば、法と証拠に基づいて、警察は厳正に取り締まってまいりたいと思っております。
残念ながら、警察にはそうした相談件数がいまだ多くないものですから、警察に御相談をいただきたいと思いますし、女性警察官を配置したり、あるいは人目につかないような車や部屋を用意したり、相談しやすい状況をつくってまいりたいと思いますので、警察としても厳正に対処してまいりたいと思います。
○池内委員 通告はないんですけれども、法務副大臣、何か一言ありますか。
○盛山副大臣 まずは、その契約自体に、違法性ということもベースにあろうかと思います。それを含めた上で、とにかくあってはならない行為であると思いますし、私たち法務省は人権という観点で関係するわけでございますけれども、今のような話、あるいはほかの人権侵害に対しても、我々として、どのような政府としての取り組みをしているのか、あるいはこういうような人権侵害に対してのおそれがあり、どういう対処をしていくのか、そういうことをどういう広報ができるのか、また検討を進めていきたい、そんなふうに思います。
○池内委員 ぜひともよろしくお願いしたいと思います。
私は、今回裁判で明らかになった例をもとに今話を進めてきたわけですが、外形的に存在するように見える契約にどれほど被害者が縛られているかということは、私は強調したいと思います。
この契約は、事業者にとっては錦の御旗です。だからこそ、今回この裁判は事業者が起こしています。加害者が起こした裁判で、見事に加害者が負けたというのが今回の裁判です。被害者は、被害の実態も性暴力であって言い出しにくい。その上、契約と暴力に縛られて沈黙をさせられている。
私は、本当にお門違いだと思いますけれども、この加害者、事業者の側が、違約金などと我が物顔でこの裁判を提訴できてしまったということを思うと、背後に莫大な違約金を実際に支払っている被害者も相当数いるのではないかというふうに想像します。被害者の中には、もちろん男性もいます。今まさに被害の中にある人にとって、また孤独に悩んでいる人に、国がやはり情報を発信していくということ、これが本当に力になるというふうに思うんです。
三月三日に記者会見した国際人権NGOのヒューマンライツ・ナウ。この調査では、ほかにも本当に生々しい事例が報告されています。私は、きょう全部言うわけにはいかないので、資料として配付しておりますので、ぜひ、この国の現状、今の性暴力被害の実態に、皆さん目を通していただきたいというふうに思います。
この判決を広く国民に知らせるということは、被害者本人が被害から抜け出すということのためにも、もちろん言うまでもなく大事なんですけれども、本来、被害の相談に乗る専門的な職業の人たち、こうした人たちにとっても重要だということを言いたいと思います。
これまで、被害者が弁護士に相談に行っても、多くの弁護士は、外形的な契約行為が整っているからということを理由に引き受けないことが多かった。
この裁判の当事者の女性は、もちろん逃げたわけですけれども、芸能プロダクションが自宅まで追いかけてきて、実力で身柄を拘束しよう、奪還しようとしたそうなんですね。この案件で警察に相談に行ったら、何と警察からは、双方から話を聞いた後で、契約書があるんだったら仕方がない、あなたは契約しちゃったんでしょう、だったらこの芸能プロの要求に応じてあと二本出たらどうかというふうに言ったそうなんですね。とんでもないと言わなければならない。被害者を守るべき立場の人でさえ、今こうした認識なわけです。
女性に対する暴力、性行為の強要は犯罪である、人権侵害であるという認識にやはり立つべきだというふうに思いますが、加藤大臣、河野大臣、それぞれいかがですか。
○加藤国務大臣 さっきのは、そうした契約は無効であるということなんですが、その以前として、本人の意に反した、そうしたビデオに出演をさせ、またそうした行為を強いるということは、これは全く人権侵害じゃないかなというふうに私は思って聞かせていただきました。まさにそういった観点から対応していかなきゃいけないと思います。
○河野国務大臣 まことに申しわけございません。きちっと警察がこうした案件に対応できるように、全国の都道府県に対してしっかりと通知、指導してまいりたいと思います。
○池内委員 ぜひともよろしくお願いいたします。
繰り返しになりますが、今回、業者側の提訴で問題が明るみになった。被害を受けた人たちは、今も、体も心も痛めつけられて沈黙を強いられているということです。
先ほど裁判の例で紹介した女性というのは、本当に幸運です。自力でPAPSにたどり着いた。これ以上もう出たくないということで、AV出演を取りやめることができた。
私は、PAPSの経験とかColaboの経験に共通しているのは、危機介入の手法が本当に大事だというふうに思うんです。問題が起きたときに、その時点で即座に濃密に関係を、かかわりを保っていくし、持っていく。相談機関の都合、例えば何時から何時までの開設窓口じゃなくて、やはり相談する側の都合に合わせて、相談したいという方々のオーダーメードで被害に向き合っていくことが必要だというふうに思います。
PAPSは事務所もなくて、少ない人数で相談活動に駆け回っていて、大体深夜にメールが来るそうなんです。緊急事態である場合がほとんどで、メールが届いてすぐプロダクションの事務所に駆けつけて、契約解除の意思を伝えて、販売の中止を求めていく。相談メールには本当にすぐ反応を返さなければ、それこそ物すごい決意でメールを送っている被害者にとってみれば、一日、二日待たされちゃったら、次に同じ気持ちで立ち上がれるかといったら、そう簡単ではないということなんです。
PAPSの支援者の方から私も聞いたんですけれども、一つ事例を紹介したいと思います。
都内の大学に通うBさんの事例ですけれども、これは、新宿駅で芸能界のスカウトと称する男性に声をかけられて、せめて写真だけでも撮らせてと言われて、スタジオに連れていかれた。学生証と保険証のコピーもとられた。仕事は選ぶことができるし、裸にならないグラビアもあるから心配要らないなどと言われて、長時間の拘束から解放されたいという思いもあって、彼女は契約書にサインをしました。
数日後、電話がかかってきて、AVの出演が決まったと突然聞かされた。Bさんは何度も電話でお断りしますというふうに伝えたけれども、これまでかかったお金、三百万円を支払ってもらうなどというふうに言われて、数日後、改めて断りの電話を入れたら、そこまで言うなら話し合おう、解約に向けて事務所においでというふうに言われたそうなんですね。そして、事務所に行った。
しかし、到着すると、その場で何とレイプをされて、一部始終を動画に撮られて、このビデオをもとにおどされて、その後AVを強要されたということなんです。ひどい撮影では、二十数人の男性に次々とレイプをされて、その動画が今も配信をされているということなんです。
このBさんは、一度はPAPSにつながりましたが、その後、連絡が途絶えています。どうなったかわかりません。
被害者は本当に生きていけないぐらいのつらい思いをしています。自己肯定感も失うし。こうしたぎりぎりの状態の支援というのは、何度も繰り返しになりますが、やはり国が責任を持ってやるべきではないですか。大臣、いかがですか。
○加藤国務大臣 繰り返しての答弁であれなんですけれども、今のお話、被害者の支援を行っている民間団体、その取り組み、これまでも情報交換等は行ってきておりますけれども、さらに密接に連携をとりながら、どういう対応をしていくことが、今お話しになったような事態を防げるのか、あるいは事態の深刻化を抑えることができるのか、そういった観点から対応させていただきたいと思います。
○池内委員 私は今、事例を紹介して、やはり危機介入、すぐにということを求めたわけなんです。
私がさらに求めたいのは、女性がAVによる性暴力から逃れるという意味では、一旦映像がインターネットに流れてしまったら、もうほぼ永久的に世界じゅうの人々に閲覧をされて、世界じゅうの人々の目にさらされるということにあります。視聴されるたびに、被害者はレイプをされ続けていると言っても過言ではない。
PAPSの相談でも、あした、あのコンビニのコーナーに自分の裸の写真が出てしまう、何とかとめてもらいたいという、本当に緊迫した相談が持ちかけられています。
こうした意に反する場合、動画の回収、販売の差しとめを行って、被害の拡大を防いでいくということが至急求められているというふうに私は思います。ぜひ加藤大臣にイニシアチブをとっていただきたいと思いますが、いかがですか。
○加藤国務大臣 これまでも、私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律あるいは児童ポルノ法というものもありました。これについて厳正な取り締まりにしっかり努力をしていかなきゃならないと思いますし、また、インターネットサービスプロバイダーによるブロッキング等の自主的な取り組みも支援をしていかなきゃいけません。
しかし、実態問題として、一度流通したコンテンツの削除というのは非常に困難になっているという状況があります。これを踏まえて、一方で、インターネットの自由性というのはもちろんあるわけでありますけれども、それを踏まえて、どういう対応ができていくのか、しっかりと勉強させていただきたいと思います。
○池内委員 ぜひとも、いろいろ難しい中でも、こうした回収の施策を進めていっていただきたいというふうに思います。
裁判で訴えられて、見事勝利をした女性の手記をちょっと紹介します。
駅付近とかのスカウトマンを禁止してほしい、禁止と言ってもやりたい放題なので、きちんと法律をつくってほしい、若者を守る、プロダクションやスカウトの取り締まりについても、しっかり考えてほしい、何でも若者のせいにするのではなくて、どうかこれらの仕事がもうからないようにしてほしいというふうに訴えていらっしゃいます。
JKビジネスでも、誰に声をかけられたかが運命の分かれ道だというふうに私は言いましたけれども、勧誘に関する法規制も極めて大切だというふうに思っています。内閣府、警察を初め、政府一丸となって取り組む課題だと思いますが、河野大臣、加藤大臣、いかがですか。
○河野国務大臣 勧誘が法に違反をしているならば、厳正に取り締まるというのは当たり前のことでございますが、今お話しいただきましたように、この問題の一番の取っかかりがそこにあるんだとすれば、もう少し何ができるか、加藤大臣を初め政府内でしっかり検討してまいりたいと思います。
○加藤国務大臣 重複になりますけれども、警察あるいは人権擁護機関というのもございます。そういった機関ともよく連携をとりながら、そうしたスカウトの対応に対して、もちろん法違反があればそれに対して断固たる対応をすべきでありますけれども、そうでない場合も含めて、どういう対応があるのか、適切な対処をどう推進していくのか、男女共同基本計画の中にも盛り込んではいますけれども、それを具体的に進めさせていただきたいと思います。
○池内委員 具体的な施策を進める上でも、JKビジネス、AVにかかわる性暴力被害に対しても、私は、やはり実態把握が大事だと思います。この点もぜひ進めていただきたいんですが、いかがですか、大臣。実態把握。
○加藤国務大臣 今のはビデオのことなのかもしれません。その前に、そもそもJKビジネスそのものの実態把握というのもお話がございました。
どういうふうにやればいいのかというところを先ほど申し上げました。その辺を含めて、しっかり研究させていただきたいと思います。
○池内委員 きょうは、大体質問させていただきたいことは網羅できたと思います。ありがとうございます。
性暴力というのは、私はやはり、魂の殺人とも言われるほどの甚大な人権侵害だと思います。性的自己決定権というのを奪われて、そして被害を受けるということは、何も女性だけの問題じゃないし、男性も、そしてあらゆるセクシュアリティーの人にとって極めて重い犯罪だというふうに思います。
私は、きょう、JKの問題も取り上げました。
やはり、みずからの欲望のままに子供を利用する社会であってはならないというふうに思います。そして、子供たちを社会の主人公というふうにしっかりと捉えて、上から目線で何か教え込むということではなくて、今子供たちが生きている世界を大人の側がやはり理解をする、大人の側が、目の前にいるその子にだからこそかけられる言葉をみずから身につけていくということが大事だというふうに思います。
そして、私はきょう、刑法の問題も指摘をしました。
今回、百年ぶりの刑法改正ということになると思います。この改正が真に女性の未来を開くものになることを私も求めます。
現在の刑法が制定されたのは一九〇七年で、これは言うまでもないことなんですが、その当時、国会議員にも、裁判官にも、弁護士にも、女性は一人もいませんでした。私も、刑法の中での幾つかの類型が性暴力として本当に制限された形でしか規定されていないということに大きな問題を感じています。日本国憲法が制定された後も刑法が改正されなかったということは、やはり急がれる課題だというふうに思っています。
女性自身が発言権を持ったのは戦後のことです。ことしは、参政権獲得七十年でもあります。
私自身は、国会に送り出していただいて、いろいろな法律を読む中で、刑法や売春防止法を読む中で、決して法律が女性の味方ではないということは痛感をしてきました。同時に、議員となって、これまで以上に幅広い方々、民間団体の方々といろいろなお話を聞かせていただく中で、多くの女性たちが、本当に大き過ぎる絶望をのみ込みながら、それでも諦めないで歩んできた闘いの歴史にも触れることができています。
今後、やはりあらゆるセクシュアリティーにかかわらずみんながお互いを尊重し合える社会に変えていくためにも、私はこの課題にこれからも取り組んでいきたいということを述べまして、質問を終わらせていただきます。
ありがとうございました。