2020-06-01
見て見ぬふりをしない社会へ――Colabo 「Tsubomi Cafe」訪問レポート
家に居場所のない若い女性に対する暴力や性搾取の問題が、新型コロナウィルスによる自粛の影響でいっそう広がっています。
中高生世代など10代を中心とした女性を支える活動をしている一般社団法人Colaboには、緊急事態宣言下の一か月あまりで、例年の半年分の相談が寄せられているといいます。
池内さおりさんは5月27日、改装したバスを拠点にColaboが定期的に開催している10代向けの無料カフェ、Tsubomi Cafeに参加。池内さんのレポートを掲載します。
~~池内さおりレポート~~
今夜、10代の女の子たちを支援するバスカフェへ行ってきました。実際に新宿の街で、声かけをして、無料のバスカフェのこと、帰る場所がないときはホテルの援助をしていることや、ご飯を食べられるし携帯の充電が出来ることなどを伝えながら、女の子たちに声かけをするアウトリーチ活動にも参加。
私は18時から23時まで。この間数回連続してアウトリーチに参加しましたが、緊急事態宣言が明けた今日は、「いつもの」歌舞伎町の風景が戻って来たような印象でした。前回は、道行く人よりも、ホストクラブなどへ女の子を誘うスカウトの姿がわんさか!でしたが、今夜は人出がもどっているようでした。
ショックだったのは、リアルで、若い女性に買春を持ちかける男性を何人も目撃したこと。明らかに何も用事がないのに歌舞伎町ゴジラ前から動かずに、女の子を物色し、間合いをジリジリと詰めて声をかけて、隣に座り、そこさら少しずつ女の子にさらに近づく…話を持ちかけては失敗し、それでも諦めずに何度も何度も女の子に接触を試みる男性。女の子を下から上まで舐めるように眺めて、ターゲットを絞って声をかける。その飽くなき熱意に、恐ろしさを感じた。我々が彼とは「全く」違う意図でゴジラ前に立ち、女の子たちに声かけをしていることに途中で気がついたのか、空間には微妙な視線のやりとりが続く。
相当ショックでした。あんな声かけに負けてたまるか!と、女の子たちの人生を、女の子自身が切り開いていくことを応援しようと、我々の声かけ活動は続けられた。
さらに、新宿アルタ前に場所をうつすと、「1万円でどう?」と、少し離れた場所でも聞き取れるような誘い方で、若い女の子にしつこく声をかけ、駅に入る直前までつけ回す若い男の姿も。何人もに声をかけるその様は、あまりに露骨で衝撃を受けた…。恐怖を感じ、近くの交番に「あの男が、1万円でどうなどと、女の子にしつこく絡んで追いかけ回していて怖いです」と通報し、警察二人が対応してくれた。
また、ゴジラ前に再び場所をうつすと、スーツ姿の若いビジネスマンが、女の子に声をかけ、断られ、また声をかけようと物色、という風景にも直面。何のために声をかけているのか、は、雰囲気が異様なので、徐々に分かるようになる。さっと通り抜けるだけでは気にたまらない光景だろうが、あの界隈の人の流れを注意深く観察していると、買春を持ちかけている人について、分かるようになる。
さらに、年齢不相応な「カップル」も今夜は何組も目撃した。子どものような女の子を連れて歩いている中年男性は、異様で目立つ。
また、婦人保護施設などに来る困難をかかえた女性が「かつてそこで客をとらされていた」と語っていた場所もあったりして、いまも一歩踏み入れたら雰囲気が他と全然違うことに気がつくほど、異様な空気の場所もある。
ごく当たり前に、買春を持ちかけることができてしまう街。ごく当たり前に、若い女性と見ればスカウトなどが次から次へと「声をかける」ことが当たり前になっている光景…
異常。一言で言って、異常だと感じた。こんな光景に慣れすぎて、自己責任で少女を追い詰める社会は、異常だ。買う側は不問に付され、むしろ「困っている子を助けてやってる」くらいの認知の歪みさえある。困っているのを助けたいなら、お金だけ渡せばいいではないか。なぜ、見返り、それも、女性の体をもて遊ぶのか?
ある18歳の子は、ネグレクトや暴力で家にいられず、家出をして、とうとうお金がなくなり、声をかけて来たホストに3000円で買われたそうだ。かなり知的にボーダーか、もしくは手帳なども手に入りそうな障害の子たちが、性的搾取の犠牲になることが少なくない。ある女の子は、知的ボーダーのような感じで、20歳で、激安のデリヘルに勤務させられていた。激安店を紹介したホストの家に住まわされ、客としてホストクラブにも通わされていた。そしてその子は、傷ついて来た。
困難を抱えた彼女たちにまとわりつく、女を値踏みする視線…。馬鹿にするのもいい加減にしてほしい。「助けたい」その言葉が真実なら、対等ではない関係性を利用して、性的搾取のスキームに巻き込むなと言いたい。これは職業差別でもなんでもない。力関係の差を利用して、女の生き血を吸って肥え太るやり方は、私は断じて許さない。どこから手をつけていいのか、途方にくれる思い。女性身体を媒介して、あちこちでさまざまな「業界」が成り立っている。そのシステムを感じざるを得ない。
また、誰にどこで出会えるか。どんな関係性を構築できるか。決定的なのに紙一重で、大きく人生を分ける闇ががっぽり口をあけて待ち構えている。ある10代の女の子は、「自分も切羽詰まってて、買春するためにSNSで出会った男に支えられていた時期があるし、その頃は男に‘感謝’さえしていた。男に迎合しなければならない悔しさが今は分かる。こういうものだ、という発想しかなかった。でも今は、それはおかしいとやっとわかるようになった。」と語っていた。「もっと学校でジェンダーについて学ぶことや、性教育がきちんとされることを望む。児相や一時保護が酷すぎる。福祉に繋がった子を追い詰めたり切り捨てない国になって欲しい」と、語ってくれた。
こんな状況、人間がつくる社会として、許されていいのだろうか?いい訳がないだろう。コロナ禍後、我々は変わっていくことができるだろうか。どんな東京を、日本を、子どもたちに準備できるだろう。大人の一人として、私は責任を痛感している。どうか皆さん、沈黙しないで、共に考えていきたい。子どもたちや、困難を抱えた女性の立場に立って想像してみてもらいたい。本当はどう生きていきたいか。本当は何に困っているか。見て見ぬふりをしない社会へ、日本も進んでいきましょう。https://twitter.com/colabo_official/status/1265240446457933824?s=21